大きな3次および2次の非線形光学効果を示す物質の研究が、過去数年の間に広く行われるようになってきた。その中でガラス材料についての研究も活発に行われているが、組成やガラス構造と非線形光学特性の関係は、まだ未開明な点が多い。そこで本研究では、ガラス中で種々の配位構造を取ることが知られているTi^<4+>イオンに注目し、アルカリチタノ珪酸塩ガラスの組成と3次および2次の非線形光学特性の関係について検討した。 3次の非線形光学特性は第三高調波発生法により測定した。アルカリ三珪酸塩ガラス中のSiO_2をTiO_2で置換していくと、置換量が1/3までは3次非線形光学感受率χ^<(3)>は置換と共に増大したが、置換量1/3から1/2まではχ^<(3)>はほぼ一定となり、さらに置換量を増やすと再びχ^<(3)>は増大した。このχ^<(3)>からTi^<4+>を中心とする配位多面体の超分極率α^<(3)>を求めると、その値は、Si^<4+>、Ge^<4+>、アルカリ金属などの作る配位多面体のα^<(3)>が組成によらずほぼ一定になるのと異なり、組成に大きく依存することがわかった。α^<(3)>は、TiO_2低含有領域では7x10^<-35>esu・cm^3/unit、高含有領域では3.5x10^<-35>esu・cm^3/unitであった。このように超分極率が変化するのは、Ti^<4+>の配位環境が変化するためと考えられた。 2次の非線形光学特性は第二高調波発生法により測定した。アルカリ金属酸化物を15mol%、TiO_2を26mol%含む珪酸塩ガラスにポーリング処理を行った。その結果、ポーリング電圧1kV/mm以上、ポーリング温度250℃以上でポーリングを行うことにより2次の非線形光学特性が発現した。この2次の非線形光学特性はTiO_2を含まないアルカリ珪酸塩ガラスでは生じず、またSHG活性に最適なTiO_2含有量が存在することから、Ti^<4+>の周りの配位環境が歪んだ配位多面体を構成するときに、2次の非線形光学特性が発現すると考えられた。
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