4-アルキン酸および5-アルキン酸が、塩化ロジウム(III)あるいはそのアセトニトリル錯体の作用により、触媒量のトリエチルアミンの共存下で立体および位置選択的分子内付加環化を経て、対応するアルキリデンラクトン類に変換できることが明かとなった。この際に、中間体としてアルケニルロジウム種が生成していると考えている。上述の反応では、カルボン酸プロトンが中間体のプロトン化の原因となるため、生成物は単純付加環化体となる。一方、あらかじめカルボン酸にn-ブチルリチウムを1当量作用させてカルボン酸プロトンを取り去り、対応するリチウム塩とし、塩化アリルの共存下で反応を行なうと、中間体のアリル化が進行し、E-5-(3-ブテニリデン)-γ-ブチロラクトンあるいはE-6-(3-ブテニリデン)-δ-バレロラクトン類を得ることができる。なお、従来既知の、塩化パラジウム錯体触媒による反応で、アリル基の代わりにビニル基を導入する場合には、臭化ビニルを塩化アリルの代わりに用いたが、ロジウム触媒の反応では、パラジウム触媒の反応では用いられなかった、より安価な酢酸ビニルが、立体選択的にビニル基を導入できるビニル化剤として利用しうることが示唆された。さらに、得られたアルキリデンブチロラクトンに、メタノール中で触媒量のp-トルエンスルホン酸を作用させると、定量的にγ-オキソ酸のメチルエステルを得ることができた。また、これに酢酸中で触媒量のp-トルエンスルホン酸を作用させると、定量的に5-アセトキシ-5-アルキル-γ-ブチロラクトンに変換することができた。以上の成果は、日本化学会第69春季年会において発表する予定である。
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