研究概要 |
本研究の目的は電子欠損錯体反応場であるカチオン性ロジウム錯体を用いた高選択的なヒドロシリル化反応及び脱水素シリル化反応の確立である。1-アルキンについて検討を行なった。電子欠損錯体反応場は非配位性対アニオンの解離により形成され、その解離の程度は溶媒の極性の影響を受ける。高い選択性を発現する対アニオンと溶媒の組み合わせを明らかにするために、トリエチルシランと1-ヘキシンの反応の種々の溶媒と対アニオンを用いて行った。本反応においては生成物として(E)体、(Z)体及びα体のビニルシランが考えられるアセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、塩化メチレン似ついては95%以上の選択率で(E)体のビニルシランが得られた。ジオキサン、THFでは逆に(Z)体のビニルシランが55%、83%の選択率で得られた。溶媒によって大きな差が見られた。比誘電率及び双極子モーメントと(E)体への選択率との間に明瞭な相関関係は見られなかった。次に対アニオンについて検討を行なった。BF^-_4,CIO^-_4,PF^-_6,OTf,BPh^-_4にそれぞれアセトンを溶媒として用い反応を行なった。BF^-_4,CIO^-_4,PF^-_6,OTfの対アニオンについては97%以上の選択率で(E)体のビニルシランが得られた。しかし、BPh^-_4を対アニオンに用いた場合は69%の選択率で(Z)体のビニルシランが得られた。これは、BPh^-_4の芳香環が中心金属であるロジウムにπ配位するので完全に解離しなかったためであると考えられる。このように対アニオンとしてはBF^-_4,CIO^-_4,PF^-_6またはOTfを用い、溶媒としてアセトンを用いると高選択的に(E)体のビニルシランが得られることがわかった。[Rh(COD)_2]BF_4-2PPh_3/アセトンの反応系を用いて種々の脂肪族及び芳香族1-アルキンのヒドロシリル化を行なった。対応する(E)体のビニルシランが95%以上の選択率で得られた。1-アルキン誘導体としてプロパルギルアルコールのヒドロシリル化を上述の反応系を用いて行なった。生成物として(E)体のγ-シリルアリルアルコールが95%以上の選択率で得られた。特に第3級プロパルギルアルコールの場合は(E)体が選択率100%で得られた。γ-シリルアリルアルコールは有用なbuilding blockであるので有機合成上意義は大きい。このように電子欠損錯体反応場に特徴的は高選択的な反応系を開発することができた。
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