本研究ではリパーゼ触媒によるラクトン類の開環重合を検討した。これまでに中員環ラクトン(6、7員環)及びマクロライド(12、13、16員環)の重合が確認され、ポリエステルが得られた。ポリマーの収率及び分子量は重合条件(酵素種、温度)及びモノマー構造に依存した。酵素種としてはPseudomonas由来の酵素が本重合に高い活性を示した。Porcine pancreatic及びCandida cylindracea由来の酵素からも重合が進行した。中員環ラクトンからは分子量1万程度のポリマーが得られた。また、6員環ラクトンと7員環のラクトンの共重合も進行し、両ユニットをランダムに有する共重合体が合成された。マクロライドは歪みが小さく、反応性(重合性)の乏しいモノマーであるが、リパーゼ触媒を用いた場合は速やかに重合が進行し、分子量2万以上のポリマーが得られた。これは疎水性の高いマクロライドモノマーがリパーゼに強く認識されるためと思われる。また、本重合に少量のビニルエステル類を添加することにより、末端にビニルエステル由来のエステル基を有するポリエステルを合成した。ビニルエステルの添加量により定量的にエステル基の導入が可能である。添加量により分子量の制御も行うことができる。さらにジカルボン酸ジビニルエステルを添加することにより両末端にカルボン酸を有するテレケリックポリマーの合成に成功した。また、機能性基を有するビニルエステルを用いることにより、末端に機能性基を有するポリエステルを合成した。
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