研究概要 |
本研究では、軽量高強度材として優れた性能を持ちながら、結晶融点の低い、高強力ポリエチレン繊維について、耐熱性を改善する指針を得ることを目的に特に物理的拘束下における融解挙動についてDSC,X線測定等の手法により詳細に調べ、以下の点を明らかにした。 1.物理的な拘束作用により、高強力ポリエチレン繊維の融点は10-15℃程上昇する。 2.物理的に拘束した場合、非拘束下では見られない中間相(六方晶構造)への相転移を経て融解する。また繊維の強度は転移点を過ぎたところで著しく減少する。 3.試料の種類(分子量、作製条件)や拘束手段をさまざまに変えて実験を行った結果、中間相への転移温度は試料や拘束手段の違いにほとんど影響されず、一定の温度(153℃)となる。従って、物理的に拘束する方法では、これ以上耐熱性の向上を期待することはできない。 4.中間相への相転移の後、試料の切断・熱収縮を伴って、完全に融解する。この融解温度は、試料や拘束条件の違いにより大きく変化する。 また、以上の特殊な融解挙動を示す、拘束繊維の融解のメカニズムについて熱力学的な考察を行い、実験結果を矛盾なく説明できる自由エネルギー図を提案した。
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