本年度はホール型推進機内部のプラズマ流の診断を、各種の計測技法を用いて行なった。以下にその結果を要約する。 1.イオンビーム電流測定 マルチチャンネルイオンコレクターを用いてイオンビーム電流を測定した。推進機出口より同心円上にコレクターを複数配置し、電流密度の空間分布を調べ、それを積分してイオンビーム電流値を算出した。その結果、推進機の加速効率(イオンビーム電流/放電電流)は50%近くに達していることがわかった。またチャンネル長さが6センチ付近で効率が最高になり、理論平均自由行程とほぼ一致した。 プラズマプルーム測定 推進機より排出されたプラズマプルームの密度、温度および空間電位の分布を静電探針を用いて測定した。空間分布の測定にはパルスモーター駆動トラバース装置を用いた。プラズマ密度、温度は共に推進機出口から離れるに従って、急激に低下するのに対して、空間電位分布は推進機外側では平坦で、真空チャンバーの壁付近まで30ボルト程度残っていることがわかった。 推進性能測定 推進性能の加速電圧や磁束密度に対する依存性を知るために、推力のリアルタイム測定を行なった。本経費で購入したD/A変換器、制御装置を用いてデータ取り込み及び処理を行なうことによって、効率の良い実験を行なうことができた。 これらの研究結果から、ホール型推進機の最適チャンネル長さに関する設計基準を議論することができた。今後は理論的な考察を深めて行きたい。
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