研究概要 |
本研究では、鋼板などの漏洩磁束探傷において,表面の欠陥分布が直接かつリアルタイムで得られるような,格子状に配置したホール素子群をセンシング要素とするインテリジェント・センシング・システムの構築について検討を行った。本研究では,観測される漏洩磁束の2次元分布から対象材表面の欠陥分布(表面磁荷分布)を求める方法として,画像処理における復元フィルタの理論を応用するもので,その変換機構をセンシングユニット内にもたせる点で特徴的なものである。主な成果は以下のとおり。 1.標準的な欠陥分布を想定したシミュレーションを通じて,表面磁荷分布の再構成に用いる種々の復元フィルタとして,定数近似ウィーナーフィルタが最も実用的であること,また,制限つき最小二乗フィルタは,望ましい復元像に関する先験的な知識が導入できる点で,さらなるインテリジェント化において有利であることが明らかとなった。 2.ROMとして搭載したフィルタ係数の値にもとづいて各ホール素子への給電を行いながら,各素子の出力電圧の合算値を計算し出力する方式のセンシングユニット(準リアルタイム型,マルチプレクサ方式)を試作し,模擬的な磁荷分布についての実験を通じて,観測平面上の漏洩磁束分布からそのリフトオフ量に関係なく表面上の磁荷分布が得られることなど,意図した性能を確認した。 望みのフィルタ係数をROMとして任意に設定できることから,たとえば,クラック状欠陥にのみに感度をもつような,さらにインテリジェントなセンシングデバイスへの発展が期待できる。
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