研究概要 |
本研究では、ポリオレフィン系肥効調節型肥料(CAF)を用いた接触施肥法における作物の根系発達の特徴を明らかにし、それと地上部生育量と肥料および土壌養分の吸収量との関係を検討した。この際、通常の速効性肥料施肥区を比較の対象とし、またCAFの施肥位置の影響も検討した。 【1】試験方法 作物はデントコーンを、また土壌は黒ボク土を用いた。初期の根系発達を調査するために根箱(縦10cm×横28cm×深さ30cm)を用い、また生育後期までの調査は、大型枠試験(株間20cm×畝間70cm×深さ50cm(1個体当たり);慣行播種密度を確保できる大きさを持つ)により行った。接触施肥とは、N,P,K肥料全量を種子と同所に条施する施肥法である。 【2】接触施肥法による作物の根系発達と養分吸収 (1)根系発達 生育初期(播種後23日)における全根重は、CAF接触区が最大で、次いで、速効性5cm分離区(慣行施肥法に近い)>CAF5cm分離区>CAF10cm分離区>速効性接触区であった。施肥部分の根重密度(mg/mc^3)は、CAF接触区で0.31であるのに対して、その他の試験区では約1/3〜1/5であった。また、収穫期の根重(g/1個体)もCAF接触区(23g)が速効性分離区(17g)よりも1.3培多かった。速効性肥料施肥では、施肥部の根系が少なく、肥焼け症状を呈した。 CAF接触施肥が作土(施肥部)のみならず下層土まで根系発達を促進することが明らかとなった。このCAF接触施肥の優位性は、CAFが温度に依存して肥料要素を徐々に溶出するために、1)初期の肥料による濃度障害を回避し、2)肥料養分、特に根の生長に重要なリンを根系発達微弱な初期に効率良く供給でき、3)生育中後期におけるPの土壌への固定とN,Kの溶脱が抑制され、高効率で養分が吸収できる状態が維持されたためと考えられた。 (2)地上部生育および養分吸収量 生育初期の地上部乾物重およびN,P,Kの吸収量は、CAF接触区≫CAF5cm分離区>CAF10cm分離区>速効性5cm分離区>速効性接触区の順に多く、収穫期においてもCAF接触区>速効性5cm分離区であった。収穫期の肥料窒素利用率もCAF接触区(47%)が速効性5cm分離区(35%)より高かった。Rb添加による土壌養分吸収活性の評価は、施肥法によらずほぼ同一あることから、根系発達量が作物の養分吸収量を決定することが明らかとなった。 以上の結果より、CAF接触施肥は、CAF分離施肥や速効性肥料を用いた施肥法に比較して、肥料および土壌養分の吸収に好都合な広い根系を発達させ、地上部生育を促進することが明らかとなった。
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