1.部位特異的変異導入によるアデニル酸キナーゼとUMP-CMPキナーゼの機構解析。アデニル酸キナーゼにおける研究成果と両酵素のアミノ酸配列比較に基づいて、UMP-CMPキナーゼの塩基認識に重要であると考えられた2カ所の残基を標的とした。アデニル酸キナーゼと同じアミノ酸残基となるように変異をそれぞれ導入した2種類の変異型酵素と両変異を同時に導入した変異型酵素を作製しており、その酵素化学的な性質を検討中である。 2.ヌクレオチド結合ドメインの交換による基質特異性の交換。UMP-CMPキナーゼヘアデニル酸キナーゼのAMP結合ドメインを導入したUAUキメラ酵素及びアデニル酸キナーゼへUMP-CMPキナーゼのUMP-CMP結合ドメインを導入したAUAキメラ酵素の2種類をそれぞれ作製した。AUAキメラ酵素ではUMP、AMPいずれの基質に対しても活性は大きく低下し、基質特異性に関しても大きな変化は認められなかった。一方、UAUキメラ酵素ではUMPに対する活性は大きく低下し、かつ、AMPに対する活性はほとんど変化しなかったため、最終的にAMPに対する活性が最大となり、基質特異性が改変された。このことから、ヌクレオシド一リン酸結合ドメインを置換することによって塩基特異性の改変が可能であることから示めされた。 3.野性型酵素及び変異型酵素の構造解析。キメラ酵素の核磁気共鳴スペクトルを親酵素と比較すると、複数のシグナルにシフトが認められ、さらに、UAUキメラ酵素においてはヒスチジン残基の存在環境にも影響が生じていた。一方、熱安定性測定によって、AUAキメラ酵素ではアデニル酸キナーゼに比較して、変性の中点温度が10℃も低下していることが明らかとなった。これらの結果から、キメラ酵素においてドメイン置換によって何らかの構造変化が生じているものと考えられた。
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