本研究は花成誘導条件下に置かれたアサガオの茎頂で特異的に転写が誘導される遺伝子のクローニングを通し、花成誘導物質の検出系を確立することを目的としている。これまでの経過は以下の通りである。 1.微量(数mg)の日長誘導(DK)および非誘導(NB)の茎頂からそれぞれcDNAを調製した。cDNAの両端にアダプターを繋ぎ、その配列を利用してPCRにより増幅したcDNAを材料に、両方のcDNAからお互いに6回のサブトラクションを行った(Wang and Brown 1991)。得られたDKおよびNBのcDNAはお互いにハイブリダイズせず、それぞれの材料で異なるcDNAの濃縮が確認された。しかしながら、濃縮された遺伝子をクローン化し詳細な検討を行ったところ、この濃縮が最初のPCR後のcDNAの存在比は反映するが、PCR前のcDNAの存在比は必ずしも反映していないことが判明した。現在PCRの条件の再検討を行っている。 2.ディファレンシャルスクリーニングに変わる方法として最近用いられるようになっているディファレンシャルディスプレー法(Liang and Pardee 1992)を用いた誘導遺伝子の検索を行った。RNAテンプレートに対し、dT_<12>MNと特定の10merをプライマーとし、_<35>S-dATP存在下でRT-PCRを行い、反応物をシークエンスゲルで分離後、X線フィルム上でバンドの濃さを比較した。プライマーの組み合わせごとに、およそ数十のバンドが検出され、その中にはDKとNB間で明らかな差の見られるバンドも含まれていた。このようなバンドをゲルから回収し、再びPCRを行うことで当該遺伝子が増幅されることを確認した。現在、新たに調製した材料を用いた追試験を行っており、今後バンドのパターンに再現性があるものを特定した上でクローン化し、ノーザン解析を行う予定である。
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