発癌プロモーター・テレオシジンは、インドール環の3位から4位に閉環した9員環ラクタムを有する特異なインドールアルカロイドである。本研究者はこれまでテレオシジンの母核化合物インドラクタムVの多彩な構造修飾により、活性発現に必要な平面構造の全容を明らかにしてきた。しかしながら、テレオシジンおよびインドラクタムVは9員環部分のアミド結合のシス・トランス異性化に起因するtwistおよびsofaの2つの安定なコンフォマ-の混合物として存在するため、レセプター結合時における立体配座に関しては不明な点が多い。本研究は、それぞれのコンフォマ-に固定した新規インドラクタムV誘導体を合成し、それらの生物活性を測定した。 まず、インドラクタムVのインドール環5位への各種置換基導入により、sofa型にコンフォメーションを固定した誘導体を合成した。Twist型に固定した誘導体は、インドラクタムVの5位から13位への架橋によって得られるものと予想し、インドラクタムVの13位メチル基をアリル基に置き換えた誘導体のアザ・コープ転位およびルイス酸による閉環反応により合成することができた。合成した各種誘導体のコンフォメーションはNMRにおける各コンフォマ-に特徴的な化学シフトおよびNOEによって決定した。これらの発癌プロモーション活性を、プロテインキナーゼCへの結合能およびEBウイルス活性化能により評価したところ、sofa型に固定された誘導体が全く不活性であったのに対し、twist型に固定された誘導体はいずれもインドラクタムVに匹敵する活性を示した。以上の結果より、テレオシジンのレセプター結合時におけるコンフォメーションはtwist型に近いことが明らかになった。
|