【目的】抗原抗体反応の厳格な反応特異性を応用した免疫アフィニティークロマトグラフィーは、食品のような種々の成分が混在している系より必ずしも高濃度ではない生理活性物質をone stepで精製するための最適な方法であるといえるが、この方法に適した抗体は目的物質の変性や失活を防ぐため、マイルドな外部環境変化により目的物質の解難が可能なものであると考えられる。本研究ではそのような抗体を得るための最適な免疫方法に関して、特に実験動物の選択と抗原の免疫回数の面から検討した。【方法】モデル抗原として主要な牛乳蛋白質であるβ-ラクトグロブリン、αs1-カゼイン、さらには鶏卵蛋白質であるオボムコイドを選択し、これらをマウス(BALB/c、C3H/He、C57BL/6)、ウサギ、ヤギ、ニワトリに二週間おきに数回免疫した。各免疫一週間後に得られた抗血清の特異抗原に対する抗原抗体反応のpHおよびイオン強度依存性を酵素免疫測定法(ELISA)により測定・比較した。【結果】各抗血清のpHおよびイオン強度依存性は動物種間やマウスの系統間では大差が認められなかったものの、初回免疫後得られたマウス抗血清はpHやイオン強度変化に対して敏感であり、免疫応答の初期に産生される抗体こそ免疫アフィニティークロマトグラフィーに適した抗体であることが示された。さらにこれらの一次応答抗体のレパートリーの中から、極めてイオン強度依存性の高いモノクローナル抗体を作製することに成功した。従来、特異抗体を作製する際、大量に抗体を得ることを目的として、免疫を繰り返し、抗体価を如何に上げるかが主眼とされてきたが、本研究の結果は抗体の使用目的に合わせて免疫方法を検討することが重要であることを示すものである。
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