筑波大学農林技術センター八ヶ岳演習林(長野県南佐久群野辺山)および富士山1合目〜2合目(山梨県富士吉田市)のカラマツ林より、カラマツヤツバキクイムシが侵入したカラマツ材を採集し、カラマツヤツバキクイムシの虫体、孔道、ならびに変色を起こしたカラマツ辺材部より菌の分離を行った。その結果、青変病菌約130菌株を分離することができた。そのうち比較的分離頻度が高かったのは、Ceratocystis laricicola、Ophiostoma piceae、O.brunneo-ciliatum、Ophiostoma sp.およびCeratocystiopsis minutaであった。このうち、特にC.laricicolaとO.piceaeの分離頻度が高かった。また、本研究により、O.piceaeの他にヨーロッパでオウシュウカラマツに対する病原性が確認されているC.laricicolaが日本にも存在することが明らかになった。日本では、カラマツに対するO.piceaeの病源性はすでに確認されているがC.laricicolaの病源性は確認されていないため、今後これらの菌を用いて接種試験を行い病源性を比較する必要がある。そのため、分離した病株の中から代表的な菌株を各種につき数株ずつ選び、低温恒温培養器ならびに超低温フリーザ-で保存しカルチャーコレクションを作製した。なお、Ophiostomasp.については現在分類学的検討を行っているが、新種である可能性が高い。その他分離頻度は低かったが日本新産と考えられる種も分離されたが、これらの種の同定のためにはさらに分類学的検討が必要である。
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