研究概要 |
裸地化したヒノキ林では,土壌侵食が発生することが古くから問題となっている。従来,このようなヒノキ林の土壌侵食を調査する方法として,土砂量の測定等の手段が用いられてきたが,長期的な土壌侵食量を明らかにする方法は,従来存在しなかったそこで,本報では,ヒノキ林においてCs-137を用いて土壌侵食調査ができるかどうか試みた。 調査林分は,三重県一志郡白山町にある三重県林業技術センターの実験林中である。実験林中に,下層植生の失われたヒノキ林,下層植生の繁茂しているヒノキ林,アカマツ林を選んだ。それぞれ,斜面上部から下部にかけて1断面を選定し,その中に4点の測点をおいた。そして,各測点ごとに4深度(0-2cm,2-5cm,5-10cm,10-20cm)の土壌をサンプリングを行った。土壌サンプルは1測点あたり3本のサンプリングを行ったものを混合して用いた。このサンプルを炉乾燥し,2mmのふるいで2mm以下のサンプルを取り出し,このサンプルのγ線量を,金沢大学RI理工系実験施設において,Ge(Li)半導体検出器によって測定した。用いた検出器の検出効率は100%のものである。手入れのがよく,下層植生の繁茂したヒノキ林と下層植生のほとんどないヒノキ林におけるCs-137の土壌断面分布を比較した。その結果,下層植生のあるヒノキ林の方は,表面近いほどCs-137が高いという分布となっているのに対し,下層植生のないヒノキ林の方は,表層2cmのCs-137濃度がそれほど高くない。このことから,下層植生のないヒノキ林は,土壌表面2cmくらいまで土壌が移動したことを示唆する。
|