研究概要 |
これまで,木材の材質の分布とその振動特性について理論的な考察と,実験による検証を行ってきて,基礎的な知見を得ることができた。具体的には,木材棒状試験体のたわみ振動特性は,せん断の影響を考慮に入れさえすれば,密度やヤング率の分布と各振動モードの共振周波数の比との関係は計算により求めることが可能であることがわかった。こうした知見は,木材の利用や材質の評価を行う場面において,さまざまに適用可能なものである。その一つとして,防腐処理や難燃処理等で木材内に薬液を浸透させる場合に生じる処理材の密度分布を上記の方法によって評価しようとするのが本研究の目的であった。 実験用試験体として,アピトン,ベイツガ,イタヤカエデを用いた。試片の寸法は,130mm(繊維方向)×10mm(放射方向)×5mm(接線方向)とした。試料を水中に浸漬し,決められた時間ごとに試片を取り出し,両端自由たわみ振動の1次モードから3次モードまでの共振周波数f_1,f_2,f_3を測定した。 たわみ振動の共振周波数の比であるf_2/f_1,f_3/f_1の経時変化が,材の種類によって異なり,注入性の悪い樹種ほど,材内の長さ方向の水分分布が大きく,それらの値が,大きくなる傾向を見い出した。これは,たわみ振動の共振周波数によって,注入性の難易を評価することが可能であることを示す。
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