研究概要 |
ポプラ若枝の形成層を含む細胞をTris-HCl緩衝液(50mM,pH7.5)と共にホモジナイズし、可溶性ペルオキシダーゼ画分(SPO)を抽出した後の細胞壁残渣からNaClおよびCaCl_2の濃度を変えて細胞壁にイオン的に結合したペルオキシダーゼ画分(IPO)の抽出を行った結果、0.6 M NaClを用いた場合が最も抽出効率が高く、酵素活性が長期間安定であることが明らかとなった。IPO画分からシリンギル核に特異性が高いペルオキシダーゼを単離する目的で、イオン交換クロマトグラフィーを行ったが、目的とするペルオキシダーゼは希薄な塩溶液中ではきわめて不安定であり、イオン交換クロマトグラフィーによる分画は不可能の判断した。また疎水クロマトグラフィーでは、酵素活性が安定に保持できる塩濃度では吸着が起こらないことから、目的アイソザイムは疎水性が低く、大きな糖鎖を有していることが予想された。ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて分取したIPO画分の主要ペルオキシダーゼはSPO画分と比べてシナピルアルコール高い特異性を示し、その分子量は約38,000と推定された。しかしながら完全な精製にはいたらなかったため、cDNAスクリーングのための抗体作成には用いることはできなかった。この画分のNativeアニオンPAGEを行った結果、全く泳動されなかったことから、シナピルアルコールに特異性の高いペルオキシダーゼはカチオン性と予想された。 一方、ポプラカルスを用いてmRNAの抽出、cDNAの合成、ベクターへのライゲーション、ホストセルへの導入等の条件を詳細に検討し、最適条件を用いてcDNAライブラリー作成し、一次スクリーニングを行った。現在、樹木ペルオキシダーゼのcDNAライブラリー作成と、ポプラカルスより単離したシリンギル核特異的ペルオキシダーゼのシークエンスを元に合成プローブを作成しスクリーニングを進めている。
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