本研究ではマガキを材料に、血球(血リンパ細胞)の貧食・殺菌過程に対する活性酸素の関与とその役割を活性酸素代謝と殺菌能の点から検討し、以下の知見を得た。 1.マガキの閉殻筋から血リンパを採取して低速遠心によって分離した血球と細菌をあわせて旋回培養することで細胞内殺菌の実験を行ったところ、5種類の海洋性細菌を含む12種類の供試細菌に対して、マガキ血球は82-99%の細胞内殺菌率を示した。また、貧食率は9-38%であり、高等動物の場合と同様に細菌種によって食細胞の反応の強さが異なることが考えられた。 2.活性酸素の直接的な影響をみるために、窒素ガスで置換した嫌気条件下でも細胞内殺菌が起こるかどうかを検討したところ、供試した12種類の細菌のうち4種類に対する殺菌能が著明に低下し、活性酸素が関与する殺菌が起こっていることを示唆した。このことは、SOD、カタラーゼなどの活性酸素消去剤を添加した場合の好気条件下の結果ともよく一致したことから裏付けられた。 3.活性酸素の生成は9種類の細菌を添加した時に明確に認められ、最も高い値を示したのは上記の4種類の1つであるProteus vulgarisであった。活性酸素の生成と細胞内殺菌への関与とは必ずしも相関はないものの、活性酸素に対する感受性菌を貧食した場合にNBT還元陽性細胞が有意に多くなるなど、生成能の亢進が考えられた。
|