まず鹿児島湾における大型甲殻類の水深別分布を明らかにするために、夏と冬に水深100m台の浅場と200m以深の深場で小型底曳網漁船により計4回の曳網を行った。上位優占種は、固体数、重量ともにPlesionika.semilaevis(和名なし)、ナミクダヒゲエビ、フタホシイシガニであった。冬は浅場(水深126m)でシロエビ、トゲサケエビ、サルエビが多く、深場(水深234m)ではP.semilaevis、ナミクダヒゲエビ、フタホシイシガニが多かった。夏は浅場(水深150m)でP.semilaevis、ナミクダヒゲエビ、トラエビが多く、深場(水深225m)ではフタホシイシガニ、P.semilaevis、ナミクダヒゲエビが多かった。なお、本研究では水深234mからサルエビが採集された。鹿児島湾最深部および周辺の水域では甲殻類の種数はそれほど多くなく、少数種が卓越する傾向にあった。以上は平成6年度日本甲殻類学会(福岡)で口頭発表した。 さらに、今年度は優占種の一つであるP.semilaevisの生態解明を第二の目的とした。なお、本種はこれまで鹿児島湾では報告がみられず、本研究で始めて形態的特徴が明らかにされ、他海域との比較がなされた(Fisheries Science投稿中)。毎月採集した標本をもとに本種の抱卵期を調べたところ、発眼卵を抱卵しているのは6〜12月であったが、11月以降の抱卵個体は内卵は持っていなかった。頭胸甲長組成解析により成長を調べたところ、成長速度に顕著な雌雄差が認められた。寿命は雌雄とも約3年であるが、雌のほうが大型になることがわかった。 本研究によりこれまで知見が皆無であった深海性種P.semilaevisの生態の一部が明らかになったが、来年度は鹿児島湾における優占種の一つであるとともに産業的にもかなり重要な大型深海性種ナミクダヒゲエビの生態解明を行いたいと考えている。
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