Botryococcus brauniiは群体性の微細緑藻であり、世界中の様々な気候の地域における分布が報告されており、時には大規模なブルーミングを形成することが知られている。また、この緑藻は乾燥重量の数10%におよぶ大量の液状炭化水素を生産することも知られており、エネルギー源としての利用が考えられている。この緑藻の大量培養による炭化水素生産を考える際、問題の1つとなるのは培養後の収穫法である。比較的大きなコロニーを形成することから、濾過により収穫が可能と考えられるが、株によっては炭化水素含量が低い代わりに、粘質多糖の含量が高いものもあることが報告されている。そこで、以前より保有しているアメリカ産のBerkeley株および東京大学農学部のミジンコ培養タンクより分離されたYayoi株について、同一の条件下での培養期間中における培養液の粘性について比較を行った。Berkeley株、Yayoi株はともに分岐型トリテルペノイドであるbotryococcene類を生産するB系統に属する株で、炭化水素含量も凍結乾燥藻体重量の30%以上と高い値を示す。Berkeley株は培養期間全体を通じて顕著な細胞外粘質多糖の生産は見られず、定常期に達した培養液でも比較的容易に濾過による収穫が行えた。それに対しYayoi株では定常期に達すると培養液全体は非常に粘性を帯び、濾過による収穫には多大な時間がかかった。また、Yayoi株の培養濾液に2倍量の2-プロパノールを加えると、沈殿が生じることからYayoi株は藻体外に粘質多糖を放出しているものと考えられた。
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