ドイツの農業生産に関わる組織の典型としてマシ-ネンリングの普及を調べた結果、1960年代半ばから1970年代半ばまではリング数が増加する創立期で、それ以降はリング数はほぼ一定で構成員数が増加するという規模拡大期となって現在に至っていることが整理できた。そして、このマシ-ネンリングの展開には、連邦政府と州レベルの補助政策が密接に関連していることが明らかとなった。補助の在り方が、それまでの機械投資を補助するものから、機械利用に関わる組織(農作業受委託仲介組織=マシ-ネンリング)の設立を補助するものに転換されたことによって、それまで機械利用組織の主流であった共同所有組織は減少し、代わってマシ-ネンリングが主流を占めるに至ったことが確認された。また、例外的に投資補助を進めていたヘッセン州ではマシ-ネンリングが育たず、共同所有組織が普及したことが明らかとなった。 さらに、マシ-ネンリングの発展は、請負業者を駆逐するものでなく、両者が相互依存的関係を持つことを指摘した。そして、両者の関係・役割分担ならびに請負業者が投資補助の対象となったことなどから、マシ-ネンリングと請負業者の相互の発展の連環性を明らかにし、そこから組織補助と投資補助という支援政策のそれぞれの意義と有効な使い分けを整理することができた。 そして、マネージャーを育成して、その人件費を補助するという組織支援策は、マシ-ネンリングの役割の多様化を可能にし、ヘルパー派遣や公共緑地等の維持管理といった地域保全事業を担う組織への展開を可能にする要因となっていることが指摘できた。
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