本研究では、農地の公的管理と多様な担い手育成・確保手法に関する研究として、次の2点を中心に研究を進めた。第1は、農業経営基盤強化法の具体化にともない、認定農業者制度が発足となったが、そうした担い手確保方策の枠組みと実施状況を検討した。第2は、そうした枠組みの変更のもとで先取り的に担い手確保方策を進めていた先進地事例調査として、主に東北地域を中心に、大区画型圃場整備を契機とした担い手への一挙的農地集積方策を調査した。同時に、そうした圃場整備を契機とした担い手育成策が困難な地域として、中山間地帯における集約化方策・付加価値型農業の展開地域として、有機農業を軸とした村作りを進める宮崎県綾町も追加的に調査した。 そこで得られた知見は次の3点である。第1は、認定農業者制度の動向では、食糧管理制度の不透明感から認定農業者の確保が困難化しており、現地での農政不信感が相当根強い状況となってきていること。第2に、大区画型圃場整備を契機とした担い手への農地集積手法として、「換地と利用権の一体的推進」が重要な機能を果たしており、農地保有合理化法人との連携を図ることにより、借地期間、担い手の交代、借地条件の統一化を図るなどめざましい成果を挙げつつあるが、生産調整のあり方の不透明感が集団的農地利用の契機を奪い、必ずしも面的農地利用集積にはリンクしていない傾向がみられること。第3に、中山間地帯における付加価値型農業展開の場合、自治体・農協による活性化方策が重要な機能を果たしているが、そうした事業の展開のためには開発公社等の別組織を必要としてきていること、同時に、付加価値型展開に加えて、土地利用型担い手の育成ないし公社直営型の補完システムが必要となっていることが明かとなった。
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