本年度はまず、宮崎市中央卸売市場を事例として、大規模小売企業を再編軸とする流通再編が進行する中で、輸送園芸地帯に存立する中央卸売市場の展開と特質を究明した。この結果、同市場は地場産青果物を大都市圏へ盛んに移出するなど、産地市場的な性格を濃厚にもつこと、スーパーなど大規模小売企業への値決めによる直接販売が増加していること、その反面で、中央卸売市場としての市場内の卸・中卸の分業体制ならびにセリ取引は堅持されていることが明らかになった。 次に、宮崎県内の野菜産地を対象に、園芸振興において、卸売市場や農協系統など産地流通組織の再編や整備が果たした役割を分析し、当時の農協合併が産地形成に積極的な役割を果たすとともに、卸売市場の側も、市場整備の時期と産地形成の時期が一致したため、より安定した経営基盤のもとに営業を行うとともに、地場産品の集荷力を高めて産地市場化していったことを明らかにした。 また、これらの調査研究と並行して、これまでの研究成果のエッセンスを「スーパーの展開と生鮮食品調達システム」として共著に公表している。 さらに、年度内に具体的な研究成果は提出できなかったが、現在、関西圏を中心とする小売業者へのアンケート調査を実施しており、秋頃をめどに、大都市圏における大規模小売企業の青果物仕入れの実態とその階層性が解明できる予定である。
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