研究概要 |
周波数解析には,簡便ではあるが最も完成度が高いフーリエ解析の使用が一般的である。しかし,ここで研究対象とする耕うん時における耕うんづめの変動現象は被切削土壌表面に形成される亀裂と関係をもち,耕うんづめの変動と亀裂形成の場所の相関をも解析対象とする。このため,単なる周波数解析のみばかりでなく振動が発生した場所(時間位置)の推定も必要とされ,周波数解析ツールであるフーリエ解析では不十分である。 耕うんづめの耕うん抵抗変動の解析にウェーブレット解析を導入することによって,変動の周波数と変動が発生した場所(時間)の推定が同時に可能になった。ここでは,耕うん時の耕うんづめの変動に16,22,27,34Hzの個別の周波数値が求められ,耕うん作用である大きな波形上に重なり合った変動波形(変動成分)の発生場所(時間位置)が,切削開始時からそれぞれ0.02s,0.04s,0.07s,0.1s後であることが計算された。これにより,被切削土壌表面上の亀裂形成の可視化により亀裂形成位置と耕うんづめの変動位置(時間)の関係を求め,未耕地土壌表面の亀裂形成の要因の探求が今後展開される。また,フーリエ解析における周波数解析では基本周波数に依存した解析精度であったが,ウェーブレット解析には基本周波数に対応する概念がなく,コンピュータの性能とプログラミング方法によってより高精度な周波数の計算が可能となることがわかった。さらに,ウェーブレット解析にはウィンドウ関数を用いる必要性はなく,不連続データについてもアナライジングウェーブレットでダイレクトに解析可能であることなどその拡張性の広さが認識された。 なお,研究成果は1995年4月4〜7日に神戸大学で開催されるInternational Symposium on Automation and Robotics in Bioproduction and Processingにて発表予定(発表申し込み,プロシ-ディング送付済)であったが,阪神大震災のため開催が順延されている。
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