平成6年度は、羊をモデルとして、生体微透析システム(MDS)を1個の自然に形成された黄体(一頭あたり)に直接埋め込み、黄体のホルモン(progesterone:Pおよびoxytocin:OT)分泌に与えるPGF_<2α>およびサイトカインの直接的影響を検索した。さらに、黄体退行現象に関わる活性酸素の役割を、MDSを通してフリーラジカルスカベンジャーを退行中の黄体内へ投与してそのホルモン分泌に及ぼす影響を調べた。 1.PGF_<2α>が黄体中のP・OT分泌に及ぼす影響 MDSにPGF_<2α>を潅流したところ、高濃度ではP分泌を一時的に刺激した。PGF_<2α>潅流後数時間後にP分泌は30〜50%減少した。OT分泌は部分的に弱く刺激されたものの、一定の作用としては認識できなかった。この結果は、PGF_<2α>の黄体退行作用は、黄体細胞に直接的だけではなく血流を通して黄体に作用することが必要不可欠な作用経路であることを示している。 2.サイトカインの作用 MDSで、マクロファージの産物であるIL-1αとTNF-αを投与した。前期黄体ではその作用は認められなかった。一方、中期黄体では、TNF-αの24h潅流によりP分泌が弱く刺激され、黄体のPGF_<2α>分泌も刺激された。これにより、TNF-αは正常な中期黄体細胞にこれまで細胞培養系で示されたような抑制的でなく、刺激的に作用できることが示された。 3.フリーラジカルスカベンジャーの作用 黄体内にMDSを埋め込んだ後、羊にPGF_<2α>を注射し黄体退行を誘起した。そこにSODやカタラーゼなどのフリーラジカルスカベンジャーを潅流し続けたところ、退行に伴うP分泌の急激な現象が有意に弱められ、本現象に活性酸素が大きく関与していることが示された。以上の一連の結果から、黄体退行に関わるPGF_<2α>、サイトカイン、活性酸素の作用機序の理解が進展した。
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