遺伝性小脳虫部欠損ラット(HCVD)の病理発生を明らかにする目的で、胎生15日より生後30日までの小脳の形態学的観察を行った。HCVDの小脳は出生直後よりすでに小さく、生後各日齢の小脳正中矢状断切片では、小葉構築形成が著しく遅延した。生後5日齢頃より、HCVDにおいて異常細胞の血管周囲への集簇が観察された。14日齢前後では血管周囲細胞は著しく増数し、多くの有糸分裂像、活発なBromodeoxyuridine取込およびNerve growth factor receptor陽性を示すことから、外顆粒細胞と理解された。その後、異常集簇した外顆粒細胞は徐々に減数し、その集簇部位は異形成小脳組織へと移行した。パラィフン切片および凍結切片を用いて、Bergmann gliaの形態を観察したところ、細胞配列異常の部位に一致して突起の波状配列・蛇行が観察された。これらの所見より、HCVDの異形成小脳組織形成の病理発生には、外顆粒細胞の血管周囲への集簇が関与すると考えられた。
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