ニワトリヘルペスウイルス1型〔マレック病ウイルス〕は、主として鶏に悪性のリンパ腫を誘発する病原性株からなるが、非病原性の株も含まれる。特に非病原性のCVI-988株は生ワクチンとして広く利用されている。このワクチンの特徴はマレック病ウイルスの感染を防止せず、その発病のみを防ぐ事にある。現在では、ワクチン株と病原性株の区別を個々の感染細胞について行なうことは不可能である。この検出上の不可分性は、詳細な機序についての研究を進める上で妨げとなっている。そこで、申請者は、病原性マレック病ウイルスに特異的なゲノム断片のクローニングを目的とした研究を立案した。本研究では、病原性株としてMd5、ワクチン株としてCVI-988を選び、マレック病ウイルスゲノムDNAの精製をおこなった。ウイルス粒子の単離を介した精製法では収率が不安定なため、パルスフィールド電気泳動法により、総量500ngウイルスゲノムDNAを直接に精製した。このDNAをMspIで切断後、断片増幅用リンカーと接続した。続けてこのリンカーをプライマーとするPCR反応によりDNA断片を非特異的に増幅し、40μgのウイルスゲノムアンプリコンを得た。このゲノムアンプリコンはウイルスゲノムDNAの全長と均等にハイブリダイズし、ウイルスゲノム全長に対応するプローブとして利用可能である事が示された。100ngのアンプリコンにリンカーを接続した後、リンカーを除去したCVI-988ゲノムアンプリコンとハイブリダイズ後、Md5ゲノムアンプリコンに接続したリンカーをプライマーとして増幅した。このアンプリコンについてのサウザンブロット解析により、第二の増幅反応で生成されたアンプリコンはMd5ゲノムに特異的な断片を含む事が示唆された。本研究により、Md5ゲノム特異的DNA断片をクローニングする事が可能となった。
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