東京大学農学部附属ベテリナリーメディカルセンターに来院した各種症例犬から採取した血小板について、ADPおよびコラーゲンに対する凝集能を比濁透過法を用いて測定した。 副腎皮質機能亢進症のイヌ(5例)ではADPに対する凝集能の低下(4例)とコラーゲンに対する最大凝集率の低下(5例)ならびにラグタイムの延長(5例)が認められた。また皮下に出血が見られた悪性リンパ腫の症例では治療前ADP、コレ-ゲンに対する凝集能がともに低下しており、さらにADPに対する凝集パターンは凝集した血小板が早期(3〜5分後)に解離するのが観察された。この症例に対し化学療法を行い臨床症状の改善が見られた時期に血小板凝集能を測定すると、健常犬と同様な凝集パターンを示した。 いっぽうヒトで血小板の凝集能が低下することが知られている多発性骨髄腫の症例について凝集能の測定を行った。この症例はIgAの2量体および3量体を分泌する多発性骨髄腫と診断されたもので、眼底検査で血管の蛇行ならびに眼底出血が見られた症例である。この症例では血小板のADPに対する凝集能の低下は認められなかった。 また特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の症例2例ではステロイド治療により血小板数の増加した時期に凝集能の測定を行うと、ADP、コラーゲンともに殆ど凝集が認められず、血小板無力症と同様な所見が得られた。このうち1例では皮下出血が認められた。さらにこれらの症例では抗血小板抗体が陽性を示したことから、ヒトのITPと同様に血小板の膜糖蛋白CPIIb/IIIaに対する抗体が存在し、この抗体によって続発性の血小板無力症を引き起こす可能性があることが示唆された。
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