研究概要 |
発生発育に伴うマウス眼球組織におけるTGFβ1とbFGF及びそれらのmRNAsの局在と加齢変化を免疫組織化学法ならびにIn situ hybridization法により検討した。胎生14,16,19日、生後1,3,5,7,14,21,28,42,70日のBALB/cマウスの眼球を材料とした。4%パラホルムアルデヒトで灌流固定し、取り出した眼球を凍結切片にした。免疫組織化学法ではTGFβ1及びbFGFウサギpolyclonal抗体を使用し、ABC法を行い、DAB反応で発色した後、光学顕微鏡により陰性と陽性を判定した。In situ hybridization法では^<35>S標識TGFβ1及びbFGF oligonucleotide probesを使用し、切片上に乳剤を適用した後、露出、現像、明暗視野の光学顕微鏡で銀粒子の局在を確認した。その結果、免疫組織化学ではTGFβ1及びbFGFともに網膜の視神経細胞層、内外網状層、色素上皮層、脈絡層、強膜層及び網膜と脈絡層にある血管内皮細胞に陽性反応が見られた。bFGFではミューラー細胞の突起を特異的に染めた。加齢による変化は胎生早期(E14-E16)では網膜内神経芽細胞層(視神経細胞層になる)が弱陽性であり、胎生後期(E19)の視神経細胞層は陽性で、生後は強陽性であった。In situの結果ではTGFβ1及びbFGFのmRNAsを示す特異的な銀粒子は強膜層に数多く見られ、脈絡層には少数観察された。そして、胎生後期では強膜層の銀粒子数は胎生早期よりかなり多かった。網膜においてはカブリレベルの銀粒子数が検出された。本研究は以下の結論を得た:TGFβ1及びbFGFのmRNAsは強膜と脈絡膜で合成され、TGFβ1及びbFGFの蛋白質は何らかの方式で網膜にある標的細胞に転送された。また、TGFβ1とbFGF及びそれらのmRNAsは胎生後期から大きな変化が見つかった結果から、TGβ1及びbFGFは胎生後期から成体に至る網膜の発生発育に重要な役割を演じていると推定される。
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