研究概要 |
生理的条件下で血管増殖と細胞の分化を示す内分泌腺である卵巣の、機能状態と細胞の微細構造との関係を明らかにする目的で性周期の各時期にチミジンアナログのBrdUを投与した。H.E.染色の後、光学顕微鏡レベルで正常発育卵胞,閉鎖卵胞,横体の同定を行い,BrdUの免疫染色,女性ホルモン合成酵素(アロマターゼ,17αlyase)の免疫染色と対比させた。正常発育卵胞ではBrdUのとりこみは活発でアロマターゼや17αlyaseは発育卵胞の顆粒層細胞,内卵胞膜細胞にそれぞれよくそまった。閉鎖のはじまっている卵胞では,顆粒層細胞へのBrdUのとりこみは低下し,アロマターゼや17αlyaseの染色性も低下していた。性周期で排卵の時期には,発育途中の排卵しない卵胞はアロマターゼの染色は急激に低下するが,閉鎖のはじまったものではアロマターゼの染色は徐々に低下することが明らかになった。透過型および走査型電子顕微鏡で観察すると,発育卵胞の顆粒層細胞は丸い核をもちその表面は微絨毛が観察されたのに対し閉鎖がはじまった卵胞の顆粒層細胞では,核は複雑なきれこみをもついびつな形でその表面の微絨毛は消失、小さなコブ様の隆起が出現,さらに進行した閉鎖卵胞の顆粒層細胞は,アポトーシスに特徴的な核の断片化やdense bodyの出現,その表面はクレーター様の陥凹が観察された。卵巣では女性ホルモンを合成していると考えられる発育した卵巣では細胞の活発な増殖とステロイドの合成が形態的に観察され,一方卵胞の機能低下を思わせる閉鎖卵胞では細胞の増殖やステロイドの合成の停止さらにはアポトーシスによる細胞死がin vivoで形態的に観察された。
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