研究概要 |
我々はRBP-Jκ遺伝子を発現ベクターに組み込み、RBP-Jκ蛋白を発現誘導できるトランスジェニックフライを作成した。この形質転換体にRBP-Jκ蛋白質の過剰発現を誘導したところ、神経芽細胞がなくなり、RBP-Jκ遺伝子はニューロジェニックジーンとしての機能を有することが判明した。上皮芽細胞となる細胞膜上には、ニューロジェニックジーンのひとつであるNotch蛋白質が神経芽細胞からのシグナルを受け取る。遺伝学的および細胞生物学的解析より、RBP-Jκ遺伝子産物がNotchのシグナル伝達系において細胞膜から核へシグナルを伝えることが報告された。我々は酵母ツ-ハイブリッドシステムを用いて、Notch蛋白質とRBP-Jκ蛋白質の会合がショウジョウバエの変位体において変化していることを証明した(投稿中)。 また、我々はRBP-Jκ蛋白質の結合性の高いDNA配列がC/TGTGGGAAであることを見いだした。RBP-Jκ蛋白質はこの配列に強く結合し転写を活性化した。さらに、遺伝学的解析によりRBP-Jκ蛋白質と拮抗する機能をもつと考えられてきたHairless蛋白質は、RBP-Jκ蛋白質の転写活性能を強く抑制することも示した。我々はニューロジェニックジーンのシグナル伝達系の最終ステップで働くE(spl)m8のプロモーター領域にRBP-Jκ蛋白質の結合配列を発見し、RBP-Jκ蛋白質がこのプロモーターをin vitroおよびin vivoともに活性化することを示した。(投稿中)。 ヒト上咽頭癌の原因ウイルスであるEBウイルスがコードする種々の遺伝子産物のうちEBNA2はBリンパ球が不死化するのに必須の役割を果たす。我々がクローニングしたヒトRBP-Jκ蛋白質はEBNA2と協同でCD23,CD21などの遺伝子の転写を活性化することを証明した。発生やリンパ球の活性化の過程においてもRBP-Jκ蛋白質はEBNA2に相当する細胞因子と会合して様々なイフェクター遺伝子の転写を制御しているものと考えられる。実際にその因子を同定すべく我々はtwo-hybrid systemを用いてマウスembryoからRBP-Jκ蛋白質に会合する蛋白質をスクリーニングし複数個の候補を得ている。
|