12-リポキシゲナーゼ代謝物のゴナドトロピン分泌調節へのかかわりを検討するために、ブタ下垂体前葉の初代培養細胞を、ラット下垂体前葉細胞で行われている方法に準じて確立した。この培養細胞に種々の12-リポキシゲナーゼ代謝物(アラキドン酸の12-ヒドロペルオキシ体、リノール酸の13-ヒドロペルオキシ体、およびそれぞれの還元物である12-または13-ヒドロキシ体)を添加し、一定時間後に培地中に放出されたLHとFSHを放射免疫測定法で定量した。対照実験として、1nMのLHRHで細胞を刺激した。その結果、2種類のヒドロペルオキシ酸はいずれも時間依存的および濃度依存的にLHとFSHの遊離を促進した。EC50値は約5μMであり、10μMのヒドロペルオキシ酸は1nMのLHRHと同程度の促進効果を示した。対照的にヒドロキシ酸ではそのような促進作用はほとんど認められなかった。また、培養細胞を用いてLHRHによるLHとFSHの放出作用に対するリポキシゲナーゼ阻害剤(NDGA)の作用を検討したところ、濃度依存的な阻害が見られ、IC50値は約5μMであった。私たちは以前にブタ下垂体前葉に強い12-リポキシゲナーゼ活性を見出し、免疫組織化学的手法により12-リポキシゲナーゼはホルモン分泌細胞の細胞質に含まれていることを示した。さらに、二重染色法により12-リポキシゲナーゼ含有細胞がゴナドトロピン産生細胞と一致する割合の高いことも明らかにした。このような知見と今回私たちが得た実験結果から、12-リポキシゲナーゼ生成物の脂肪酸ヒドロペルオキシドが、LH-RH刺激時のブタ下垂体前葉ゴナドトロピンの放出に関与している可能性が示唆された。
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