高脂血症を負荷したSDラットに独自に開発した“En face double immunostaining"を応用し、大動脈病変を経時的に観察した結果、病変の分布や特徴がヒト脂肪班に類似し、単球・MφのみならずTリンパ球が多数湿潤していることを明らかにした。特に早期病変の形成にTリンパ球が重要に関与していると考えられるた。このような成果を基盤に本研究ではTリンパ球の役割をより明らかにするために、Tリンパ球の欠如したヌードラットを用いて同様の手技により検討した。実際、末梢血液中の白血球分画をFACScan flow cytometerを用いて解析すると、ホモ接合体ヌードラットではTリンパ球はほとんど欠如していた。このようなホモ接合体ヌードラットとTリンパ球に異常がないヘテロ接合体ラットに高脂血症を負荷し、大動脈病変を比較検討した。ホモヌードラットではTリンパ球は欠如し、内膜に接着、湿潤する単球・マクロファージはヘテロに比し少なく認められ、且つ病変好発部位により局在化していた。ところが内膜へ湿潤したマクロファージの脂肪蓄積の程度を画像解析装置を用いて検討すると、ホモヌードラットの病変を構成するマクロファージは有意に大きく、細胞内脂質が豊富に蓄積されていることが判明した。すなわち、Tリンパ球の欠如は単球・マクロファージの集積による内膜病変形成を抑制するが、一旦内膜に湿潤したマクロファージの脂肪蓄積(泡沫細胞化)に対しては促進的に作用することを明らかにした。
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