研究概要 |
目的:アルツハイマー病変などの明瞭な組織学的指標を欠き大脳皮質の非特異的変性を示す痴呆症の臨床病理学的特徴を検討する。 方法:Mayo Clinicにおける1972年から1992年の約14,000例の剖検,臨床記録を検索した。その結果、臨床的に痴呆症が確実に存在し、脳血管障害などの二次的要因や既存の変性疾患を除外でき、かつ病理学的に老人斑、神経原線維変化、Lewy小体、Pick嗜銀球など認知障害の原因となりうる要因を除外しえた19例を抽出した。14例でABC法によりubiquitin、tau蛋白に対する免疫染色を行った。 結果:19例の平均初発年齢は65才(55才〜88才)で、初期症状として記銘力障害(14/19)、言語障害(12/19)、前頭葉徴候(11/19)、人格変化(10/19)を認めた。大脳皮質の肉眼的萎縮に基づき、前頭葉型、前頭側頭葉型、側頭葉型、側頭葉内側型の4型に分類できた。組織学的には、大脳皮質の神経細胞脱落と強いグリオーシスに加え、皮質上層の海綿状変化(17/19)、白質のグリオーシス(12/19)、neuronal achromasia(7/19)、線状体(12/19)、視床内側核群(14/19)、異質(16/19)の軽中等度の変性を認めた。皮質上層の小型神経細胞内にubiqutin陽性で一部tau陽性の構造物を少数認めた(8/14)。Gallyas陽性のgrainは、3例のみで確認された。 考察:19例の各亜群は、frontal lobe degeneration、嗜銀球を伴わないPick病などの多彩な名称で報告されてきた症例に重複する。しかし、今回の検討と報告例の対比では皮質の病変分布以外に本疾患群を明確に細分化しうる組織所見は得られなかった。従って、現時点ではSimple Cerebral Atrophy of Non-Alzheimer Typeの名称で一括することは妥当であると考えられた。
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