昨年度までの一連の研究から成熟ラット肝細胞は増殖能力に関して一様ではなく、少なくとも3種類にわけられることがわかった。(1)一つは増殖能力が旺盛な小型な肝細胞で、コロニーを形成するように増殖する(Type I cell)、(2)分裂可能であるがその回数に制限があるように思われる細胞(Type II cell)、(3)まったくDNA合成を行わない細胞(Type III cell)の3種類である。今年度は、肝細胞増殖抑制因子として知られている、Activin A、IL-1β、IL-6、TGF-βが初代培養ラット肝細胞のDNA合成を抑制し、コロニー形成を抑制できるかどうか、又、その作用機序について調べた。具体的には、コロニー形性能に対する作用をみることでType I cellに対する抑制作用の有無を、全体のDNA合成能(BrdUの取り込み:Labeling Index)を調べることでType II cellに対する増殖抑制作用みた。Activin A、IL-1β、IL-6、TGF-βの4因子ともType II cellのDNA合成を濃度依性に抑制することができ、最も抑制作用が強かったのはTGF-βであった。また、その抑制作用は、TGF-βとTGF-βのみが不可逆的で、他の3因子は可逆的であった。コロニー形成を抑制したのはIL-1βのみでActivin A、IL-6にその作用はなかった。換言すればActivin A、IL-6はType I cellに対して無効であった。IL-1βとTGF-βはその作用機序が異なるようで、IL-1βは可逆的に、TGF-βは不可逆的にコロニー形成を抑制した。加えて、IL-1βはコロニー形成過程ではその抑制効果がみられるが、一担形成されたコロニーの細胞に対しては無効であった。TGF-βはいかなるTypeの肝細胞に対しても増殖抑制作用を示した。
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