SERA(serine-repeat antigen)蛋白質(111kDa)は熱帯熱マラリア(Plasmodium falciparum)において同定された主要抗原の一つであり、有望なワクチン候補と考えられている。本研究においては、レコンビナントSERA蛋白質を利用したマラリアワクチンの開発を目指して、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)由来の蛋白質(SERA蛋白質)を大腸菌を用いて発現させ、精製した蛋白質を動物に免疫して得られた抗血清のマラリア原虫に対する影響を調べた。使用したレコンビナント蛋白質は、人工遺伝子を合成DNAによって構築することによって大腸菌において発現した、SERA蛋白質(989残基)のN末端側の領域(SE47';17番目から382番目までの366アミノ酸残基)及び、中央付近のシステインプロテアーゼ相同配列を含む領域(SE50A;568番目から802番目までの235アミノ酸残基)である。これらを精製し、マウス及びラットから抗血清を調製した得られた抗血清によって、in vitro培養の熱帯熱マラリア原虫の増殖阻害実験を行った。その結果、抗SE47'抗体は抗SE50A抗体に比べて、強いマラリア増殖の阻害効果を有していた。また、SE47'蛋白質を可溶化した状態は、不溶化した場合に比べ、強力な阻害効果を持つ抗血清が得られた。さらに、フロイントアジュバンド(FCA)によってこの阻害効果は大きな影響を受け、FCA非存在下で作製した抗SE47'抗体はFCA存在下で作製したものに比べ、はるかに強い阻害効果を示した。以上の結果は大腸菌を用いたSE47'蛋白質が、マラリアワクチンの候補として極めて有望である事を示唆するとともに、マラリア原虫の増殖を阻害する抗体を誘導するためには、その免疫の方法、特に蛋白質の状態とアジュバントの選択が重要であることを示唆するものである。
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