1992年に新潟県某村の65歳以上の高齢者全員(1399名)を対象に高齢者健康基礎調査を実施し、1325名(94.7%)が調査に応じた。これらの対象に転倒・骨折の発生状況を明らかにする目的で1992年9月、12月、1993年3月、6月に調査員による質問紙を用いた聞き取り調査を実施し、さらに、1994年に追跡調査を行った。聞き取り調査で回答の得られた1224人(回収率92.4%)の中で1年間に1回以上転倒した人は239人(19.5%)であった。転倒した男性94人の総転倒回数は124回で、転倒した女性162人の総転倒回数は215回であった。転倒により骨折したのは男性で5.6%(7回)であるのに対し、女性では7.9%(17回)と女性に若干多かった。男性では12.9%(16回)の転倒が医療(通院、入院)を要することになったが、女性では27.0%(58回)の転倒で医療を要し、女性の転倒の方が医療を要する場合が有意に多くなっていた(p<.01)。医療を要する転倒は74歳未満の前期高齢者と75歳以上の後期高齢者の比較では有意差はなかった。男女別に年齢階級別に見ても有意な差を認めなかった。男女別の医療を要する転倒の発生状況では、男性では時間帯に関連がなかったのに対し、女性では日中と比較し夜間の転倒が有意に関連していた。また、男性では有意ではないものの屋外での転倒が屋内より医療を要する傾向が多かったが、女性では逆に屋内での転倒が屋外より有意に医療を要していた。今日問題となっている医療を要するけがの代表である骨折を引き起こす転倒の発生状況が本研究から明らかになった。
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