当該年度における研究実績は以下の通りである。 1.SLE患者における末梢血単核細胞(PBMC)よりvav proto-oncogene産物Vavを免疫沈降し、そのチロシンリン酸化の程度を正常者群、SLE患者抗CD45自己抗体陽性群および陰性群で比較検討した。その結果、SLE患者群は正常者群に比しVavのチロシンリン酸化は軽度増加傾向にあった。また抗CD45抗体の有無にては、Vavのチロシンリン酸化の程度に有意差はなかった。この理由として、当研究においては、患者PBMCを分離して用いたが、リンパ球サブセットにおけるVavのチロシンリン酸化の変化が、PBMC全体では現われない可能性が考えられ、また、PBMC分離に要する時間などが、チロシン脱リン酸化のin vitroでの変化に影響している可能性も考えられた。 2.一方、抗CD45自己抗体陽性SLE患者血清より分離精製された抗CD45自己抗体を用いて、in vitroにおけるPBMC増殖への影響を検討したが、CD3およびPHA刺激によるPBMC増殖に軽度の抑制効果が認められた。また細胞培養液中IL-2濃度、IL-2mRNAレベルにおいても抗CD45自己抗体による軽度の抑制効果が認められ(原稿準備中)、SLEにおける免疫低下に抗CD45自己抗体の関与が示唆された。この系において、T細胞レセプター(TCR)近傍の分子群のチロシンリン酸化に関し検討したが、Vav、Fynなどのチロシンリン酸化への抗CD45自己抗体添加による影響は、1時間までの時間経過においては認められなかった。CD45に対する自己抗体の細胞増殖への影響がこの分子の脱リン酸化活性に由来するものだとすると、より長時間の観察による脱リン酸化の阻害などをより詳細に検討することにより、有意な変化が認められる可能性はある。
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