本研究は、C型肝炎の免疫学的機序を解析するため、C型肝炎ウイルス(HCV)core抗原特異的細胞障害性T細胞株を樹立することを目的とした。C型肝炎ウイルスの81より100のアミノ酸を認識するHLA B-44拘束性のC型肝炎ウイルスcore抗原特異的細胞障害性T細胞株(CTL clone)を樹立した。樹立細胞株は、樹立の元となった細胞障害性T細胞ラインと同じくHLA B-44拘束性であり、C型肝炎ウイルスの81より100のアミノ酸を認識した。また、組換えHCV cioneワクシニアウイルス感染の細胞を認識し、内因性のHCV coreを認識することも確認された。 このCTL coreを使用し、C型肝炎ウイルスの81より100のアミノ酸の内、どのアミノ酸を最小単位として認識するかの実験を行った。それぞれ、アミノ末端、カルボキシル末端より、次第に短くしたペプチドを合成し、これをHLA B-44をもつEB virus transformed B cellにパルスし、細胞障害活性を見た。その結果、C型肝炎ウイルスの88より96のアミノ酸を最小単位のエピトープとして認識することが判明した。この最小単位のエピトープはもとの81より100のアミノ酸より、より強く認識され、今後のより強いエピトープ部位として、細胞障害性Y細胞の誘導等に有用であった。 この最小エピトープを様々な患者にて、そのシークエンスを解析したところ、1つの突然変異が見つかった。この変異ペプチドを合成し、それを標的とする細胞障害活性を見たところ、その細胞障害活性はもとのペプチドに対するものより、低下していることが観察された。従って、この変異は、細胞性免疫に対するウイルス側のエスケープ変異と考えられた。
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