研究概要 |
医療の著しい進歩にもかかわらず膵疾患、特に膵癌の予後は未だに改善されていない。今日まで、超音波診断、内視鏡的逆行性膵管造影などの種々の画像診断が膵疾患に行われ、膵の異常を捉える機会は多くなってきた。しかし、膵癌と他の良性疾患を鑑別するにはまだ限界があるといわざるを得ない。最近では経口細径膵管鏡を用いて膵疾患の鑑別診断を行った報告が見られる。今回、我々は膵管鏡直視下生検をめざして生検用器具の開発を行い、その基礎的研究を行った。 対象と方法:我々が開発した膵管鏡の特徴はファイバースコープの形態が円筒状になっている点である。外径は2.09mm,内径は0.7mmの管空構造を有し、ファイバーは円筒の周囲に装着されている。そのため内部にガイドワイヤーを容易に挿入することが可能である。我々は、膵管鏡の鉗子孔に挿入可能な直径0.7mm、長さ70cmの生検用器具を作製した。今回は基礎的研究として生検器具によって得られた組織が病理学的診断に耐えうるかどうか検討を行った。対象は手術により摘出された胃癌切除標本10例であり、内訳は早期胃癌5例、進行胃癌5例とした。それぞれの標本で切除後すぐに癌部3カ所、非癌部3カ所を採取し、組織標本として病理学的検討を行った。 結果:採取されたいずれの標本においても組織が小さすぎるために病理学に正常組織あるいは異常組織と判定することは困難であった。次に我々は採取した標本を採取後すぐに2枚のプレパラートにて圧挫し検討した。癌部細胞、非癌部細胞はいずれも通常の細胞診診断と同じように観察され、いずれの標本においても癌細胞と正常細胞を鑑別することが可能であった。 結論:今回の検討では、我々が開発した生検用器具では組織をプレパラートにて圧挫することにより癌細胞と正常細胞を鑑別することが十分可能であることがわかった。
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