我々の教室では以前より潰瘍性大腸炎の病態に関し、免疫学的に追究しているが、潰瘍性大腸炎患者血清中にマウスの系で胸腺内T細胞の分化、増殖に影響を与える因子の存在を明らかし、本因子がIL-7であることを証明した。今回の研究ではIL-7が大腸粘膜局所においてどのような役割を果たしているかを追究することを目的とし研究を進め、以下のような研究実績を得た。1.RT-PCR法及びSouthern blot hybridization法により、ヒト大腸粘膜においてIL-7mRNAの発現が確認された。また酵素抗体法及びin situ hybridization法にて大腸上皮細胞にIL-7蛋白及びmRNAの発現が認められ、大腸上皮がIL-7を産生していることが確認された。2.ヒト大腸上皮細胞cell lineをIFN-γにて刺激し、enzyme immunoassayにて上清中のIL-7濃度を測定したところ、goblet cell phenotypeに分化した後のHT29-18-N2においてIL-7蛋白の発現が認められ、大腸上皮、主に大腸杯細胞がIL-7を産生する可能性のあることが示唆された。3.recombinant IL-7を含むRPMI 1640mediumで正常ヒト末梢血リンパ球(PBL)及び大腸粘膜固有層リンパ球(LPL)を5×10^5/mlの細胞濃度に調整し、増殖能を検討したところ、LPLではIL-7濃度依存性に増殖が認められたが、PBLでは増殖は認められなかった。また、抗CD3抗体とのco-cultureではPBLでは以前から報告されているように増殖が認められたが、LPLではIL-7濃度依存性に増殖が抑制された。以上のことから大腸上皮より産生されるIL-7が腸管粘膜内リンパ球の増殖、機能的分化に通常の末梢血リンパ球とは異なった機序で影響を与えている可能性が明らかとなった。今後、炎症性腸疾患の病態への関与を明らかにするため、現在潰瘍性大腸炎患者における大腸局所IL-7発現に関し、検討中である。
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