肝疾患における各種可溶性接着分子の動態と機能を解析し、新たな知見が得られた。 1、肝疾患における各種可溶性接着分子の動態 血清可溶性ICAM-1値は慢性ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎で高値を示しALT値と正の相関がみられた。慢性ウイルス性肝炎ではインターフェロン治療前後のALT値と可溶性ICAM-1の変動はほぼ同様であった。原発性胆汁性肝硬変でも高値を示したがALT値とは相関がみられなかった。また肝細胞癌でも高値を示したが症例間のばらつきが大きく、AFP値や腫瘍の大きさとは関連がみられなかった。血清可溶性VCAM-1値は慢性ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎で高値を示したがALT値との相関は可溶性ICAM-1に比しく、インターフェロン治療前後におけるALT値の変動と可溶性VCAM-1の変動には関連がなかった。血清可溶性ELAM-1値は慢性ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎で高値を示したがALT値との相関は認めなかった。 また、肝内の各種可溶性接着分子の遺伝子発現量と血清可溶性接着分子量との間には、弱いながらも正の相関が認められた。 2、肝疾患における可溶性ICAM-1の機能 血清可溶性ICAM-1値が高値の血清はLFA-1/IACM-1依存性の同種細胞凝集反応を抑制するが、可溶性ICAM-1値が高値の血清は抑制しないことが明らかとなった。この傾向は慢性肝炎で認められるが、肝細胞癌では可溶性ICAM-1値と同種細胞凝集反応抑制率の間に相関がみられず、慢性肝炎と肝細胞癌では血清可溶性ICAM-1の機能、性状が異なる可能性が示唆された。
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