我々は、平成6年度科研費により、以下の成果を得ることができた。 1.サンドイッチELISA法を用いた気管支肺胞洗浄液(BALF)中IL-8の測定 平成5年度に引き続き、特発性肺線維症、サルコイドーシス、過敏性肺臓炎および気道熱傷患者を対象に、BALF中IL-8を測定した。その結果、特に特発性肺線維症では症状安定例ではBALF中IL-8が低値である一方で、急性増悪例では何れも高値を示し、症例によりIL-8が関与する場合としない場合のあることを明らかにした。 2.フローサイトメトリーを用いた細胞内抗原検出法による検討 まず、末梢血単球及び単球系培養細胞を用いて、エンドトキシン刺激後の経時的な細胞内IL-8量の推移をフローサイトメトリー法により検出し得ることを示した。また、細胞固定後のサポニン処理の有無により、膜表面及び細胞内サイトカインを独立に検討し得る可能性を示した。 一方、昨年度に引き続き各種炎症性肺疾患患者より肺胞マクロファージを採取し検討した。その結果、特発性肺線維症患者では肺胞マクロファージのIL-8産生能が亢進しているにも関わらず、同じくBALF中IL-8が高値を示す過敏性肺臓炎患者では同細胞のIL-8産生能が亢進しておらず、疾患により同細胞の機能が異なることを示した。 3.肺局所および末梢血中好中球のIL-8受容体発現の検討 慢性下気道感染症患者の肺局所および流血中の好中球を採取し、両者におけるIL-8受容体発現をフローサイトメトリーを用いて比較検討した。その結果、肺局所好中球のIL-8受容体発現は、末梢血好中球に比し、有意に発現が抑制されていることを見いだした。
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