DMDのモデル動物であるmdxマウスと、コントロールマウスであるB10マウスの骨間筋細胞の電気生理学的性質の差異を明らかにする事を目的として実験を行った。方法は、組織学的に、筋細胞が再生筋で置き換わっていると思われる4週齢のX-linked muscular dystrophy (mdx) miceと、同週齢のC_<57>BL10/Sc(B10) miceを対象とした。各対象の下肢骨間筋を取り出し、collagenaseを用いて1時間インキュベートし、単一筋細胞を単離した。倒立顕微鏡下で単離した細胞に対しガラス管微小電極を密着させて、パッチクランプ法による測定を試みている。しかし、細胞電極間のシールが不完全な為、未だ正確な電極測定は出来ていない。しかし、B10マウスに比べ、mdxマウスでは、機械的刺激(主に吸引)に伴う異常なチャンネル電流が多く観察されるように思われた。これは、以前より報告されているmechano-sensitive channelの増加によるものなのか、単にdystrophin欠損に伴う、筋細胞膜の細胞骨格の脆弱性による二次的な減少なのかは鑑別不可能であった。今後は、手技的問題を解決し、安定したチャンネル電流の測定が可能となるようにした上で、各種チャンネル阻害剤下での、機械的刺激に伴う異常なチャンネル電流を測定し、イオンチャンネルの同定を行う。さらに、刺激を加えない状態での自発チャンネル電流も測定し、mdxマウスにおける各種チャンネルの異常の有無を検討し、筋細胞膜骨格であるdystrophin欠損により特定のイオンチャンネルの異常が生じるのか否かを検討してゆく予定である。
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