研究概要 |
心不全の長期予後に対する強心薬の有効性の差異を解明するため、心不全患者血清中で上昇することが知られている腫瘍懐死因子(TNF-α)による細胞傷害に対する各種強心薬の効果につきin vitroの系で検討した。^<51>Crで標識したマウス線維芽細胞L929細胞を、マウスTNF-α(1ng/ml)、各種強心薬(10^<-5>-10^<-4>M)とともに12時間培養後上清中の^<51>CRを測定し、細胞傷害に対する強心薬の保護効果を定量的に評価した。 10^<-5>M 3.2x10^<-5>M 10^<-4>M Vesnarinone(Ves) 88.0% 73.6% 57.8% Amrinone(Amr) 101.0% 98.5% 108.4% Pimobendan(Pim) 92.8% 76.2% 41.7% MCI-154(MCI) 97.8% 95.4% 100.7% (TNF-α単独による細胞傷害=100%、n≧18) 上清中LDH測定による細胞傷害の検討、及びTNF-αI対して感受性のマウス血管内皮細胞F2-細胞でも同様の結果を示すとともに、この細胞保護効果はTNF-α投与前1時間の前処置で認められなかった。(control;1.4±0.2,Ves;15.6±0.6,Amr;21.9±2.1,Pim;13.2±5.4,MCI;21.9±3.9pM/mg protein)。 VesnarinoneとPimobendanは濃度依存的にTNF-αによる細胞傷害を軽減し、細胞保護効果を有することが判明した。Amrinoneに対するVesnarinoneの有効性は、臨床試験、並びにウイルス性心筋炎による心不全モデルでも既に確認されており、今回の結果と一致する。Vesnarinoneによる心不全の長期予後の改善機序として、TNF-αによる細胞傷害に対する保護効果の関与が示唆されるとともに、このin vitroの実験系は抗心不全薬の作用機序解明、及びそのスクリーニングに有用であると考えられた。
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