圧反射に対する体液性血圧調節因子の修飾作用を定量的に評価するために動物実験を行った。家兎をウレタンとクロラロースで麻酔後、圧反射の他のループの影響を削除するために、迷走神経、大動脈減圧神経は切除した。交感神経系を介する圧反射の性質をみるために両側の頸動脈洞を体循環系より分離することによりフィードバックループをオープンとし、加圧器に接続した。(1)頸動脈洞内圧を加圧器を用いて不規則に変化させ、心臓交感神経活動、心拍数、血圧を200Hzで記録した。(2)バゾプレシン受容体拮抗薬を全身投与し、内因性バゾプレッシンの働きを遮断した状態で、(1)と同様に頸動脈洞に不規則な圧を入力し、心臓交感神経活動、心拍数、血圧に起こる変化を記録した。得られた結果をもとに頸動脈胴内圧から心臓交感神経活動、心拍数、血圧までの応答特性を周波数解析を用いて伝達関数として定量化し、バゾプレッシン受容体拮抗薬投与前後((1)と(2))でその性質を比較した。その結果、交感神経系を介する圧反射の特性は内因性バゾプレッシンを投与しても変化しないことがわかった。従来バゾプレッシンは圧反射の定常利得を変化させるなどの影響を及ぼす事が報告されていたが、交感神経系を介する圧反射の特性にはほとんど影響を及ぼしていないことがわかった。以上よりいままで報告されて来たようなバゾプレッシンの圧反射の特性に及ぼす影響の大部分は他の反射弓おそらく迷走神経系を介して起こっている事が示唆された。
|