アレルギー性紫斑病(HSP)と川崎病(MCLS)は小児にみられる全身性血管炎であり、病因は未だ不明である。前者は腎炎(HSPN)、後者は冠動脈病の合併がある。一方、Wegener肉芽腫症などでは抗好中球細胞質抗体(ANCA)が検出され、この抗体が好中球から活性酸素や腫顆粒をひきおこし、その結果、内皮細胞障害さらに血管炎を惹起すると考えられている。 私は、上記2疾患に関して、ANCAと抗内皮細胞抗体(AECA)の存在を検討した。HSPNにおいては少数だがIgA型ANCAが検出され、さらにこのような例では、腎病変が活動性で、好中球の浸潤をともなった例であることを報告した。MCLSにおいては、IgG型およびIgM型ANCAが対照に比してその値が高値であり、特に冠動脈病変合併例でIgM型ANCAが検出される例が多くみられた。 AECAの存在はHSPNにおいてIgA型AECAが検出される例が多かったが、腎病変の程度とは相関はみられなかった。MCLSではIgG型とIgM型AECAが検出され、その値も対照に比して高値であり、冠動脈病変合併例でIgM型AECA値が高値であった。さらに両疾患の血清による内皮細胞障害性をみたところ、HSP・HSPNでは細胞障害性は認められなかったが、MCLSでは補体依存性の内皮細胞障害が認められた。MCLSにおける内皮細胞障害性は、γ-Glb添加によりその障害度を現弱させることができた。また内皮細胞障害度とIgM型AECA値の間に正の相関がみられたことから、MCLSにおいて、補体要求性のIgM型AECAにより、内皮細胞障害が惹起される可能性が示唆された。
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