1993年、福山型筋先天性筋ジストロフィー(FCMD)原因遺伝子は染色体9q31-33に局在することが初めて報告され、更に1994年にはその局在範囲がより限局化、マイクロサテライトDNAマーカー“mfd220"近傍であることが判明した。これにより我々は、当科における多数のFCMD家系を対象にDNA多型解析を施行し、臨床における診断的応用あるいは臨床的バリエーションの遺伝子学的な検討を試みた。多型解析は、当初提出した計画書の方法に基づき、mfd220を含む9種類のマイクロサテライトDNAマーカーを用いて行った。 1.多型解析による世界初のFCMDの出生前診断を2家系に対し施行した。多型解析結果から、胎児の表現型の確率をコンピュータープログラムにより算出した。その結果、家系1の胎児は約99%の確率で保因者、家系2の胎児は約86%の確率で罹患者と判定。家系1は妊娠を継続し、健康女児が出生した。家系2は家族の希望により、在胎20週に人工妊娠中絶を施行。FCMDを示唆するwart-like nodulesが胎児脳表に認められた。 2.同一家系内で一方は独立歩行可能、他方は不能であった臨床経過の異なる同胞例2家系を検討した。両家系ともに、多型解析のハプロタイプはそれぞれの同胞間で全く一致しており、独立歩行可能となる非典型例もFCMDのスペクトラムに入ることが示唆された。 3.FCMD典型例の20家系のグループと、経過中独立歩行が可能であった非典型例の13家系のグループについて連鎖解析を施行した。コンピュータープログラム(LINKAGE)を用い2点連鎖解析を施行した結果、両グループ共にmfd220において有意なLODスコアを獲得した。これより、独立歩行可能となる非典型例も典型的FCMDと遺伝子的には同一のスペクトラムに入ることが証明できた。
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