腎移植患者10例より経時的に血液、唾液、便、尿、腎組織などを採取し、感度の優れたPCR法によりHHV-6、HHV-7の排泄、感染状況を調査し、以下の成績を得た。 1)腎移植後、HHV-6感染1例、HHV-7感染3例が血清学的に証明、このうち1例は同時感染例であった。 2)移植後、両ウイルスDNAは唾液、血液、稀に便、尿中などに検出された。 3)移植時、約半数の患者は唾液中にHHV-6DNAを排泄、8〜10週後の排泄率は78〜100%に達した。一方、HHV-7DNAは移植時以降、ほぼ全例の唾液中に検出された。 4)HHV-6DNA血症は移植2週後(20%)及び8〜10週後(14〜33%)に認められた。一方、移植時には約30%前後のHHV-7DNA血症が存在、以後その検出率は50%前後を示し、さらに10週後には86%に増加した。 5)便中排泄率はHHV-6DNA 0〜13%、HHV-7DNA 20%前後、尿中排泄率は両ウイルスDNAとも0〜11%の範囲内を示した。1例は移植時から6週後までHHV-7DNAを便、尿中にほぼ持続的に排泄していた。 6)移植時採取した腎組織中からHHV-6DNA(100%)、HHV-7DNA(50%)が高頻度に検出された。 7)両ウイルス感染症の病態への関与は臨床経過が把握された6例で検討、このうち3例に病的状態を確認、第1例目は水痘帯状疱疹ウイルス感染、拒絶反応、第2例目はサイトメガロウイルス感染、第3例目は拒絶反応。第3例目は拒絶反応に先行しHHV-7感染が存在した。 今後、拒絶反応におけるHHV-6、HHV-7の役割を詳細に検討、移植腎生着率の向上のための抗ウイルス剤、免疫調節剤の開発などに発展させたい。
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