放射線治療により腫瘍が縮小・消失しても、再増殖は日常よく起こってくる。再増殖が発生すると、放射線治療による腫瘍制御の失敗と考えられるが、局所制御の失敗は、治療に対して腫瘍がほとんど反応しない場合と、治療により腫瘍が消失した後、再増殖を起こす場合がある。前者は放射線療法で治療成績の向上は望めないが、後者は現状の治療法を工夫し、再出現する腫瘍を制御出来れば、治癒率を向上できる。しかし、照射した部位に再増殖した腫瘍は現在治療が困難であり、再増殖が発生した後では適切な手段がない。放射線治療に反応し治癒する腫瘍と、消失するが再増殖する腫瘍の差異を明確にすることが出来、再増殖する可能性のある腫瘍は初回治療として、さらに追加治療を行なえば、放射線治療成績の向上に直結する可能性が示唆される。本研究では実験移植腫瘍を用いて、照射により治癒する場合と再増殖する場合の腫瘍生化学的特性を検討し、両者の差異を明らかにすることを目的として開始した。マウスに放射線治療に対して感受性の高いSANH腫瘍を移植し、腫瘍が8mmに増殖したところでTCD90に相当する45Gyを照射する。照射後12週間の経過観察後、腫瘍が完治しているマウスを用い、SANH腫瘍を移植した部位に再度同一のSANH腫瘍、あるいは異種のFSA、NFSA腫瘍を移植した。腫瘍が8mmに増殖したところで放射線治療を行ない、治療効果を腫瘍の増殖曲線とTCD50により検討した。再移植された腫瘍のうち、NFSAの増殖と放射線感受性は初回移植で治療を行った場合と同一であり、再移植による修飾は認めなかったSANHおよびFSA腫瘍は初回移植で治療した場合に比べて、発育が遷延し、放射線感受性は低下した。
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