当研究で作成するマルチメディアテキストブックのテーマには、医学生および研修医が実際に利用できるように、「基本的な骨疾患のX線サイン」を取り上げた。画像診断におけるサインは特徴的形態を有し視覚的な理解が重要である。よって高品質画像が得られるコンピューターテキストブックが有効と考えた。またサイン集というファイル形式のテキストであれば、限定された研究期間に合わせてテキストのボリュームを調整でき拡張も容易である。 パーソナルコンピューター(Macintosh:アップルコンピューター製)を用い、各サインの説明文(サインの定義、診断的意義、疾患名)をワープロソフトを用いてtext fileで作成した。サインの典型例と思われる画像(X線写真、CT、MRI)をデジタル化し、光磁気ディスク上にPICT file形式で貯蔵した。またサインの模式図は、描画ソフトを用いて作成した。 作成した複数のメデイア(textおよびPICT file)を、編集ソフトで各サインごとにまとめ挙げ、表紙、目次を付加した。 できあがったマルチメディアテキストブックの画質は期待通りであった。またこの作業を通じて従来の書物の作成作業と異なり、簡便でかつ著者の意向に添ったテキスト作りが可能であった。実際の作業では、各種メディアの収集、デジタル化にかなり時間を費やすことがわかった。必要とされる画像が入手できデジタル化できる手段が整えば、設備は安価であり、一般病院でもテキスト作成可能であると思われる。 今後の問題点としては、1)メディアのデジタル化を容易にすること。このためには、どの医療関係者にも利用できるようある程度専門業者への委託も考慮する必要があるかもしれない。2)できあがったマルチメディアテキストブックの配布。だれでも使用できるためには、CD-ROMによる出版とInternetを用いた情報の提供が現実的であろう。
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